新札幌整形外科病院

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治療について

膝前十字靭帯再建術

膝前十字靭帯(ACL)再建術について
前十字靭帯損傷の診断と治療
前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)は膝関節の安定性のためにとても重要な靭帯であり、これが損傷(断裂)すると、「膝が抜ける」「膝がはずれる」「膝がずれる」などといった不安感により、日常生活やスポーツに支障をきたします。新鮮前十字靱帯損傷は一部を除き、ギプス固定では治癒しないこと、さらに放置した場合、年月を経て半月板損傷や関節軟骨の変性・損傷をきたし、痛みやひっかかり感が出てくることもあります。また、それ以上の年数で変形性関節症変化の合併率が高くなることから、日常生活においても不安感を生じる方やスポーツ選手などの活動性の高い方には手術的治療がすすめられます。
症状
  • 怪我をする時に、何かブチッと切れたような音や、膝が突然はずれたといった感覚を生じたりします。その後、関節内に徐々に血がたまり、膝全体が腫れて痛みを伴うようになります。
  • 怪我をしてしばらくすると、膝の腫れも次第におさまり痛みは軽減しますが、膝をひねったり、急に止まろうとしたりする時に、「膝が抜ける」、「膝がはずれる」、「膝がずれる」などといった不安感を伴う症状がでるようになります。
  • 半月板や軟骨に損傷がなければ、痛みは軽いか無いこともあります。
診断
  • 前十字靭帯損傷の診断は、(1)徒手検査(医者の手による診察)と(2)MRI(エム・アール・アイ:核磁気共鳴画像)検査でします。
  • 怪我をしてすぐには、"痛み"と"腫れ"のため徒手検査でも充分な所見がとれず、診察を受けても明らかに診断されない場合があります。
  • MRI検査は診断に有用で、靭帯だけでなく、半月板、骨、軟骨などの他の組織も同時に診ることができます。
  • 怪我をしてからしばらくして受診する方は、通常、膝に不安感(膝くずれ)を自覚していることが多く、徒手検査でほとんど診断は可能です。ただし、怪我から時間が経っていると軟骨や半月板の損傷もしている可能性も高く、MRI検査を受けることがすすめられます。
治療(靭帯再建術)
  • 前十字靭帯損傷では、損傷した靭帯を縫合しても治りにくいため、自家腱移植による靭帯再建術が必要となります。
  • 手術は、関節鏡(内視鏡)を用いて行います。関節内に内視鏡と手術機械を入れるための小さな(約1cm)切開2つと、腱採取と腱を骨に固定するための骨内トンネルを作成するための数cmの切開で行います。
  • 靭帯再建するために採取する腱として、(1)骨付膝蓋腱、(2)多重折り膝屈筋腱、(3)骨付大腿四頭筋腱などが世界的に行われていますが、我が国では(1)と(2)が主流です。当院においては、複合靭帯損傷などの特別な場合を除いては、(2)膝屈筋腱を移植材料として靭帯再建術を行っています。
  • 手術に要する時間は、靭帯以外に半月板や軟骨の処置があると通常より時間はかかりますが、およそ1~2時間です。

健康な靭帯

断裂した前十字靭帯

術後
最新の前十字靭帯再建術(動画:Remnant-preserving ACL Reconstruction)
術後のリハビリテーションの進め方
  • 術後のリハビリは、入院リハビリと外来リハビリに分けて行います。
  • 入院期間は1~2週間で、術後2日目から1/2荷重歩行(松葉杖を使用)、術後1週で全荷重歩行(松葉杖なしでの歩行)、術後2週で膝関節の曲げ伸ばしの運動を開始します。
  • 外来リハビリは、膝の状態によりますが、最初の2ヵ月間は週2~3回の通院が必要です。急性期を過ぎるとスポーツ復帰に向けたトレーニングを自宅や職場で開始します。また術後約2ヵ月間は装具をつけて生活をします。
  • 医師の診察は、術後2ヵ月の間は、1~2週毎に、術後3ヵ月以降は1か月毎に行います。必要に応じて、MRI検査により靭帯の治り具合をチェックします。
  • スポーツ復帰に向け、段階的にトレーニングをすすめ、術後約3ヶ月で軽いジョギングを開始し、術後4ケ月でバランストレーニング、術後6ヵ月でダッシュ、ジャンプを含むアスレチックトレーニングを開始し、術後9~12ヶ月で競技復帰を目指します。
膝前十字靭帯(ACL)再建術について
術後リハビリテーション~(術後2日目から)
  • Leg raising(脚上げ)
大腿四頭筋の強化
30cm程度、脚をあげ5秒間保持
  • Hip abduction(脚横上げ)
中殿筋、大腿筋膜張筋の強化
患側を上にして横になり、30cm程度、脚をあげ(やや斜め後に)5秒保持
  • Reversed leg raising(脚後上げ)
ハムストリングス(太ももの裏側)、大殿筋の強化
うつ伏せで30cm程度、脚をあげ5秒保持
術後リハビリテーション~(術後3週目から)
  • Leg extention(膝伸展運動)
大腿筋四頭筋の強化
セラバンドなどを利用し膝屈曲90~70°の間での膝伸展訓練
膝を伸ばし、5秒間静止して元の位置に戻します
  • Static skating(静止スケーティング)
大腿四頭筋、ハムストリングスの強化、平衡感覚、持久力向上
体を30°前屈、膝を60°屈曲の姿勢
一度健側に体重を乗せ、腰の高さを変えない様に患側に体重を移動させます
患側に体重を乗せたまま、5秒間静止します
静止後、ゆっくり健側に体重を戻します
【注意】
体重をかけた時に 膝が内側に入らない様に気をつけてください
  1. 北村信人ら:屈筋腱を用いた解剖学的二重束前十字靱帯再建術、OS NOW Instruction 8 スポーツによる膝・足関節靭帯損傷の治療、2008.
  2. Kitamura N, et al. Biomechanical characteristics of three pivot shift maneuvers for the anterior cruciate ligament-deficient knee: In vivo evaluations using an electromagnetic sensor system. Am J Sports Med 2013.
  3. Kitamura N, et al. A novel medial collateral ligament reconstruction procedure using semitendinosus tendon autograft in patients with multiligamentous knee injuries. Clinical outcomes. Am J Sports Med 2013.
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